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NEXT 【完結】
第17章 名
「あー、心配だなぁ」

エレベーターの中でリョウタがつぶやく。

「?」

「稜、今日すっごいエロい顔してるもん」

「!!!」

誰のせいだと!!

何か言い返そうと口を開こうとすると、5階で人が乗ってきた。

リョウタが、益々体を寄せてくる。

いつものあの匂いが稜の鼻をくすぐり、さっきまでの色んな事を思い出させる。


ヤバイ。何をしても思い出してしまう。

「ほら、その顔...」

耳元でそう囁いて、耳たぶをぺろっと舐める。

「きゃっ!」

エレベーターが開いて、先ほどの人が怪訝な顔をして先に降りてゆく。

「もう!変な顔で見られたよ!」

「稜がして欲しそうだっから」

手をつないで歩きながら、ケロリとしてリョウタが答える。

「今日、仕事大丈夫?」

「!大丈夫っ!リョウタこそ寝てないでしょ?」

「あはは。俺は講義中寝れるから」

それもどうかと思ったが、口には出さない。

「結局、昨日の休みは何てゆってもらったんだっけ?」

「親不知抜くって」

「じゃ、今日一日シブイ顔してなきゃねー」

「...そんなに顔、おかしい?」

「うん。超エロい。さっきまでセックスしてましたー、って顔」

「!!!」

にんまりとリョウタが笑う。


それは嘘だろうけど、確かに顔は火照ってる。

数子さんにバレたら大変なことになる。


「ねぇ」

「ん?」

「リョウタってどう書くのか教えてもらってない」

「どうしたの急に」

「知りたいの」

ふっと笑ってリョウタがカバンを探る。

「字が難しいんだよねー。ここに郵便が...あった」

見せてもらったそれには“斎藤 羚汰”とある。

「羚汰...」

「うん」

「確かに、あんまり見たことない字だね」

「そーなんだよねー」

「ずっとリョウだと思ってたから、変な感じ」

「まあ、俺も羚汰って呼ばれるの好きじゃないから。誰にも呼ばせないし」

「なんで?」

羚汰がぷっと笑う。

「稜とすっごく似た理由」

「私と?」

「うん。稜、教えてくれたじゃん?“りょうさん”って呼ばれると、あの漫画の人みたいで嫌だって」

「うん」

「稜に比べたらなんてことないかもだけど、いるでしょ“リョータ”ってやつが」
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