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加虐の皇子と愛玩ドール
第1章 公開遊戯

 ほづみは、改めて落ち着いて見ると、やはり綺麗な顔立ちをしていた。
 気の強そうな双眸に、通った鼻筋、きゅっとしまった唇が、端然とした雰囲気を引き立てている。それでいてどこか柔らかだ。物腰や、表情が、そのオーラを和らげるからか。

「……ごめんなさい」

 ほづみがふっと呟いた。

 ガラスのテーブルの上に、かつん、と、空になったグラスが落ち着く。

「何が?」

「お姉ちゃんが無茶言って」

「ああ、そのこと」

 確かに無茶だ。

 素人の娘を、しかも妹を見せ物にしようだなんて、どうかしている。

 雅音に対する文句は挙げれば尽きない。
 それでも、今でも彼女との友情を疑っていない。

 みおりは、これだけ利用されているのに、雅音を放っておけなかった。

 それが何故か、分かっている。だから来たのだ。

 警察に届けを出すことはしないで、自分の意志で、雅音の罠に嵌ままったままでいてやっている。

「ほづみって、案外、普通の子だな」

「え……?」

「お洒落して、笑って、酒飲んで。出逢いがあんなんだったから、洋服着てるのが、なんか不思議っていうか」

「…………」

「なんて」

 みおりはほづみに手を伸ばす。

 そして、ほづみのフリルレースから覗いた左手の甲に、指先を重ねる。

「当たり前か。君は人間なんだし」

「あ……当たり前です」

 ほづみがおろおろ目蓋を伏せた。

 黒曜石の煌めきを湛えた双眸が、とりとめなく宙を彷徨っていた。
 小さな頬にほんのり紅が浮かんでいるのは、チークの色か、酒の熱か、それとも別の所以があるのか。
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