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加虐の皇子と愛玩ドール
第6章 淫虐連鎖
「さっき、恋人いるかって訊かれてただろ」
「あー……はい」
「何でいるって言ったわけ?」
みおりはカウンターのすぐ側の、三人連れの女性らが囲っているテーブル席を瞥見した。
全員、共通点が全く見えない。一人は黒い巻き毛に極彩色のワンピース、そしてもう一人は焦げ茶色のショートヘアにタートルネックのカットソー、ボトムはデニムスカートという身なりをしていて、最後の一人はゴシックパンクスタイルだ。
「いるみたいなものですもん。私、みおりさん以外とキスするつもりはありませんし」
「──……。……そっか」
時に、ほづみは、仕事に戻らなくて平気か?
みおりがカウンターの向こうでせっせと働く友人を見遣ると、前方に腕が伸びてきた。ほづみの、ふわふわのエンジェルフリルから伸びた腕が、シャンパングラスを取り上げたのだ。
ほづみのしっとり濡れた唇に、黄金色のクリアな液体が含まれていく。
「ご馳走様です」
「それ、私のだけど」
「みおりさんの味がしました。後でお礼します、お寿司持ってきます」
ほづみが悪戯っぽく笑って、腰を浮かせた。それから、何事もなかった風にカウンターへ戻っていった。
「…………」
みおりは、たった今までほづみの重みでへこんでいたはずのソファのシートと、一口分の水位の下がったグラスを見る。
ほづみの指が支えたところと同じところからグラスを取って、ほづみの唇が触れたのと同じところから、シャルドネの芳醇な深みを味わった。
雲行きが妖しくなったのは、開店から一時間ほど経った頃のことだ。雅音の組んだタイムスケジュールでは、ここでフリータイムは一端終了、この後、店全体で、有志挑戦者達による恵方巻の早食い選手権と豆まきとが予定されていた。
そこでみおりは、雅音の早食い選手権の開始を告げた口から、とんでもない付属ルールを聞いたのだ。
雅音が、ここにいる誰よりも暴れたがる妹からマイクを奪われまいと、差し迫る腕を避け手を避けしながら、身体をくねくね動かしていた。