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加虐の皇子と愛玩ドール
第7章 耽溺被虐

「可愛ーいっ。知ってるお品物もありますけれど、地元じゃ見たことないのもあります。みおりさんっ、ここ、品揃え豊富です」

「改めて見ると綺麗だな。ゴシックも展開始めたって聞いていたけど、こんなに凝ったやつだったんだ」

「元は甘ロリィタだけでしたもんね。姉妹ブランドは別のデザイナーさんが担当されてるみたいですよ。私もみおりさんみたいなカッコイイ系の美人さんだったら、こういうのも着てみたかったな」

「着れば?」

「似合いませんよぉ」

「そういうものだって。どんな服でも、最初は似合わない。新入生の制服姿は着られてるように見えるのに、忘れた頃に馴染んでいるのはそういうことだって、誰かが言ってた」

「その記事、見たことあります。じゃ、みおりさんはロリィタ服、着て下さい。一緒に新開地を拓きたいです」

「私は遠慮しとく……」

 二人、ラックを離れると、他の陳列棚を眺めて歩き出す。

 甘いロリィタとミステリアスなゴシック、両極端なスタイルを提案しているこの店は、全く違ったタイプの品物が揃っていながら、同じ空間の中で不思議と調和がとれていた。

「雅音、大丈夫かな」

「昨夜の話ですか……」

「この間のナイトイベントのこと、参加客の一人が、Twitterで呟いた。それが警察の目に触れて、店に捜査が入るかも知れないって。私も雅音は一度痛い目見るべきだと思っていたけど、こうガチでヤバくなると、笑えないっていうか」

 みおりは、ほづみとこうして遥々東京まで逃げてきた経緯を振り返る。

 ことの発端は、昨夜、ほづみと「Gemini」で夕餉をとっていた時のことだ。否、掘り下げればおよそ半月前、あすこで開かれたナイトイベントにまで遡る。

 「Gemini」はその立地条件が災いして、客足は極めて芳しくない。雅音は、それで屡々イベントや会員制のパーティーを考案しては、常連客を繋いでいたところがあった。もちろん、雅音の店主としての器量や人柄、料理の味に魅力を感じて足繁く通いつめる客がいる。だが、それと同時にイベントは、確かに集客率に助力していた。

 問題の節分パーティーで、「Gemini」は乱交パーティー紛いになった。
 みおりとほづみは、雅音らの行った淫らなゲームに少なからず関与していた所以、ともかく身を隠しておくよう頼まれたのだ。
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