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加虐の皇子と愛玩ドール
第7章 耽溺被虐







 みおりは浴場を出るなり手早く身繕いをして、さっと髪を乾かすと、ホテルのエントランスを訊ねていって、藍田与子の名前を告げた。そして、彼女が昔の仲間達と宿泊している部屋番号を聞き出した。

「塙岸さん!何でいらっしゃるんですか……?」

 みおり達の宿泊している部屋と違って、与子の部屋は和室だった。
 同室の友人は飲み物を買いに出かけているようだ。無防備な仔ウサギ一匹、ここで留守番していたらしい。

 いっそ思わせ振りなまでに清楚な顔立ちに黒い巻き髪、与子のたおやかでありながら鍛え抜かれた体つきを慎ましやかに引き立てるのは、極めて装飾性の乏しいワンピースだ。

 みおりは、たった二日前に抱いたばかりの愛玩動物に、さしずめ幻にでもまみえた如くに瞠目されていた。

「愛玩ドールと旅行」

「っ、……。え……」

「何、その意外そうな反応」

「塙岸さんは、特定の女性に、深入りされたことがないって……」

「彼女は別。私は姉の友人だから、わけあって言いつけられたんだ」

「そう、なの」

 与子から、心なしかほっとした顔色が見て取れた。

 二日前の今日だ。この既婚の愛玩動物も、他人にやきもき出来るほど、まだ余韻から解き放たれきれていないのだろう。

「バスケ部だったんだ」

「ええ」

「どうりで、体育会系の身体をしていたはずだ」

「嫌いだった?」

「やだったら、再会してまであんなことしてない」

「…………」

「君の友達、美少女を玩具にしたいって、本気?」

「あ、ええ。当時からサディストの気があって……。皆バイセクシャルなんだけど」

「恋人は?」

「三人は、それなりに。他の二人はモテないらしくて、アダルトビデオで妄想してうずうずしている」

 与子を玩具にして遊べば良いのに、という冗談は、呑み込んでおく。

 みおりとて、縁を持ったマゾヒストを片っ端から味見しているわけではない。ニーズが噛み合ったところで相性はあるし、それ以前に選り好みがある。

「美少女、提供しようか?」

「まさかっ……」

「割りと万人受けする露出狂だよ。与子だって、たまには逆の立場を味わってみたいんだろう?」

「庭での話、筒抜けだったのね」
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