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加虐の皇子と愛玩ドール
第7章 耽溺被虐

 与子は、百々子がソファに腰を下ろした側に、ひざまずく。

「好きだと伝えてみると良いのに」

「……ご主人様は、誰もご自分のものに……なさいません……」

「そう。私もお前を自分のものにはしないわ」

「分かっております。……っん、ぅぅ」

 もっとも与子がみおりに主従を超えた情熱を打ち明けられないのには、あの加虐の性癖を持つ皇子の孤高のポリシーを、理解しているからではない。

 与子の記憶が確かなら、みおりは、いくら友人の妹でも、あれだけ仲睦ましく旅などしない。
 胸が迫るほどの切なそうな眼差しだった。与子は、みおりにあんな目で見つめながら、その唇や皮膚に口づけられたことはなかった。みおりがほづみを虐げるほど、得も言われぬ情念を、優しさを、ぶつけられてはいなかった。

 みおりが好きだった。与子が長年親しんできた幼馴染みのために、みおりを頼って初めて他人と枕を交わしたあの日、恐怖はほんの一瞬だった。

 与子は、被虐に耽溺している自分自身に、溺れきった。

 今や誰でも良いのかも知れない。ただ、与子は二十三年間も幻想を見せておいて、三年前、一度きりの貴重な人生を人妻という檻の中に閉じ込めた、自分から初恋を奪った幼馴染みでなければ誰でも良い。

「お舐め」

 与子の口に、ハイヒールのつま先が突きつけられてきた。

「…………」

 与子は百々子にひざまずいたまま、舌を出す。

 全裸で、ローターから誘発されるのとは別の疼きを性器の奥に覚えながら、泡沫の王の足をしゃぶっていた。

* * * * * * *

 二日振りに戻った地元は、当然、懐かしい風景が広がっていた。

 みおりはほづみと月曜日の早朝に、馴れ親しんだ土地の土を踏むと、彼女を友人の暮らすマンションの部屋へ送り届けていった。

 乱交パーティー主催の嫌疑をかけられた友人は、果たして、チャイムを鳴らすと、あっけらかんとした寝起きの顔を出してきた。艶やかな黒髪に卵形の顔、雅音の落ち着いた感じのある美貌は健在だ。

 みおりは雅音に促されて、リビングに通された。

 洒落た猫脚テーブルの上に、サンドイッチにビスケット、三人分のティーセットが、優美な芳香の三重奏を奏でて並んだ。
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