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加虐の皇子と愛玩ドール
第7章 耽溺被虐

「それで、お店は大丈夫だったの?」

 ほづみがビスケットをかじりながら、雅音に玲瓏たる目を向けた。
 その装いは、豪華絢爛なアイボリーのワンピースに姫袖ブラウス、さらさらの髪に被せてあるのは、とびきりデコラティブなヘッドドレスだ。高貴な眼差しにとびきり優雅な身のこなし、こうして眺めていると、いっそ今朝まで別人と過ごしていたようにさえ感じるものだ。

「ええ、問題なし。結局捜査も入らなくて、問題のツイートをしたお客様も、あの後、夢オチだったと書き加えてくれたから。ウチのお酒が美味しくて、エッチな夢を見るほど酔い潰れたんだって」

「良かったー」

 みおりはミルクのとけたアールグレイを味わいながら、姉妹の会話に耳を傾けていた。

 一昨日の夜、ほづみが、逃避行までする必要はなかったのではないかと仄めかしていた。みおりもそれには同感する。雅音は、お節介を働かせたのではないか。

「旅行はどうだったの?」

「楽しかった!」

「ほづみ、二日も悩んでたよな。東京限定色のワンピース」

「そうなんです。全国展開されてるのだと、ピンクとサックス、黒だけなのに、東京は白とレモンもあったんです」

「ほづみは白?」

「お姉ちゃん何で分かるのー」

「姉だもん。何でも分かる」

「──……」

 ついでに、と、みおりは雅音の妖艶な眼差しを向けられる。

「ほづみでどんなことをして楽しんだか、今夜、店に話しに来てよ」

「「…──!!」」

 みおりは同じく隣から、ぎくっとした気配を感じた。

 昨日はともかく土曜の夜の宴に関しては、口が裂けても話せない。

 ほづみを女体盛り擬きの器に使って、見せ物にして、部屋に戻って夜が明けるまで、快楽責めの海に沈めた。そして朝、またしても公共浴場を貸しきりにして、与子と百々子を呼び出して、四人で淫らな遊戯に耽ったのだ。

 旅先の思い出がこの友人の耳に入れば、また、店で何をさせられるか分からない。

「何はともあれ、良かったでしょ。水入らずの旅行なんて、初めてじゃない?」

 みおりは雅音に肯定も否定も示さないで、ビスケットをかじる。

 なるべくなら、今度は、厄介な事情は抜きで、ほづみと旅行を楽しみたい。

 三人、とりとめない談笑をしている内に、時刻は八時を回っていた。







──fin.
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