この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
加虐の皇子と愛玩ドール
第8章 仮想忘憂
会おうと思えばいつでも会える、そうした事情を差し置いて、みおりが通話に甘んじているのは、不完全が時に扇情の因子になるからだ。
一糸まとわぬ女体と、とりたてて色気もない着衣から断片的にむき出しになる清らかな肌、両者が並んでいたとする。さすればみおりの今夜の気まぐれは、後者の方にエロティシズムを見出だす人間の心理に似通うのではないか。
甚だ脆い明かりの中で、みおりが触れることはなきにせよ、愛玩ドールが喘いでいた。
無にも等しい闇のもたらす想像力は、実体を持たない存在を、視覚に顕す。
「部屋、明るければ鏡……よく見えるだろう。ほづみ、自分につねられて、どんな顔している?身体、どんな風に、どこが一番嬉しそ?」
『ぁっ、い……ゃ、たまらなくなっ……て、目を細めて…………頬も口も歪めて、ますぅ…………ぁんっ、あああ……はぁ、はぁっ、……乳首、ぷくぷくに尖って!!ピンクのとこ…………しわだらけ、ですぅ……ヴァギナが、よだれ……床にまで…………ああっ、はぁぁ……』
「ふぅん。ほづみの乳首は、欲望が溜まりつめたんだね。針で突いて、どんないやらしいのが出てくるか……見てやりたいな。……威勢のイイ音、こっちの部屋にまで響いてる。窓、開けよっか。通りがかりのご近所さんに、発情期の変態でも飼ってるって思われちゃうかも」
『……──ぁっ、みおりさん、に……聞いていただいてるだけで、じゅ、ぶん……ああっ……っっ』
ひくひくっ、がくんっ、と、水から打ち上げられた人魚が大暴れしている物音が立つ。
「こぼした汁、舐めな」
『はぁっ、……』
「這いつくばって、野生みたいにしゃぶるんだ」
『──……、っ……』
「ほづみ」
『はい』
「子機、口許」
『はい、……』
ぴちょ、じゅるっ、と、飢えた猫がミルクにがっつくのを聯想する、豪胆な音が立つ。
「どう?」
『気持ちイイ、です……』
「自分のつゆ、舐めて気持ち良いんだ?ご主人様のいないとこで、随分いやらしいドールだ」
『みおりさんの、声…………聞いてると……みおりさんの指を……みおりさんと一緒の、時を……はぁっ、思い出すだけです……』
ぺちゃぺちゃ、ぺちゃぺちゃ──……。
水音が、やがて止んだ。