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加虐の皇子と愛玩ドール
第8章 仮想忘憂
『はひっ……ん……はぁ…………みおり、さんん……』
「それ撮った時、いつ挿れたんだっけ?」
『っ、…──クリで……はぁっ、八回…………イッてからです…………はぁっ、はぁ……びくびくの、クリに、玩具をあてながら…………』
みおりの中で、まだ日の浅い記憶がより鮮明になる。
ほづみに握らせたディルドは終始オンに設定していた。
例に洩れなくみおりの勤めるアダルトグッズ製造販売メーカー自慢の製品は、ひとたび体内に挿れたが最後、その異常な形状と獰猛な振動故に、努めて動かす手間もなく、狂わんばかりに気が遣られるのだと定評がある。その狂暴な張型で、みおりはほづみに彼女の花園を最も濡らす、肉芽にあてがうよう指示していた。ほづみはあまりの刺戟に耐えかねて、屡々、ディルドの先をずらそうとした。命令に背くドールに与えられる体罰は、肌着からはみ出た乳房の根本や内股を、クリップで飾るというものだった。
『はぁっ、みおりさ……ぁあんっ、はぁっ、…………もぉ、指、………指、挿れたいっ……です…………』
現在のほづみも限界に迫られているらしい。電話口の向こう、たった一人の情熱的な夜が展開している白熱灯の閨房から、今にも性臭が滲み込んでくるようだ。
「良いじゃん。ほづみ、クリだけでイけるんだから。いやらしい豆粒を可愛がって、どれだけ充血して脹れ上がったか、写メ撮って寄越せよ」
『ぁっ…………ぅっんん……やぁっ、ほん、とに…………はぁっ、はぁぁっ、……』
突然、けたたましい夾雑音が割り込んできた。
じっとりと濡れた溟海に、いきなり、軽快な歌謡曲が流れ出す。
「っ、…………」
『──……、んっ、ふ』
「…………。……」
着信メロディーの出どころは、みおりの携帯電話だ。しかも、十秒過ぎても根気強く鳴り続けている。
『はぁっ、みおり、さん……お電話……』
「──……」
みおりは、たった今まで重宝していた文明の産物に打って変わって白けた気分に追いやられて、渋々ノイズの発信源を引き寄せる。
桐原花叶。
液晶画面に、部署こそ違えど常々懇ろにしている会社の後輩の名前が出ていた。