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加虐の皇子と愛玩ドール
第8章 仮想忘憂
* * * * * * *
…──助けて!!
みおりが携帯電話を握ると、花叶の取り乱した声が聞こえてきた。声は、幾分遠くにあるようだった。
ほづみが思いがけず事態を察した。みおりは、放っておこうか決めあぐねていたところを結局ほづみに異見されて、花叶の起臥するマンションの部屋に駆けつけた。そして花叶に教えられた通り裏手に回って、やはり教えられた通りの窓に、石を投げた。夜陰に、銀の飛沫が煌めいた。
みおりがガラスを除いて部屋に入ると、果たして、花叶の姿はあった。
きりっとしたつぶらな目許にスマートな輪郭、花叶の焦げ茶の巻き毛は昼間と同様アップに結ってあって、肉づきの良い、それでいてしとやかな肢体は、深夜に相応しからぬ姫系ブランドの洋服で装ってあった。
花叶は背もたれのある椅子に縛りつけられていた。腕は背中で組まされてあった。乳房が平素に比べて豊かに見えたのは、膨らみの麓に縄が食い込んでいたからだ。
みおりが拘束を解く間、時折、花叶の腰がひくんと動いた。覚えのある匂いが気にかかって、一言断ってスカートをたくし上げると、案の定、パンティはなかった。
みおりは、花叶の性器を貫いていたバイブレーターを引き抜いた。電源は入っていなかった。片方の太ももが腫れていた。それから内股に、煙草を押しつけた跡と見られる変色があった。
花叶を椅子に拘束して、辱しめたまま出ていったのは、交際して二年になる恋人だという。
みおりは花叶の恋人に関することで、以前にも深刻な悩みを受けていた。
花叶の恋人は優しく温厚な性格だった。だが、このところ以前には全くなかった女友達との交流が増えて、花叶に暴言を吐いてくることが出てきたのだという。
みおりは花叶の話を聞いて、震えが治まるまで手を握ってやった。それから二人でシャワーを浴びると、時刻は、午前六時が迫っていた。
花叶の家から会社まで、八時半に出て間に合う距離だ。とにかく一睡もしないのでは身体ももたない。みおりは花叶に眠ることを勧めて、自分も寝室の一角を借りた。
二時間の眠りの後、二人、化粧をしないで家を出た。
みおりも花叶も、身支度にかける手間は最低限にとどめた。会社に着くまでの途中でコンビニエンスストアに立ち寄って、マスクを買った。