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加虐の皇子と愛玩ドール
第8章 仮想忘憂
「ほづみ、ん、……」
「はぁっ、ぁぅ」
上体に、汗だらけの腕がまとわりついてきた。
みおりはほづみの下腹を撫でて、太ももを撫でて、今また茂みのない花園の洞穴に指を近づける。
指先で僅かに触れただけで、誘惑的な水面に吸い込まれそうになる。みおりは自分の欲望と、そしてほづみのそれとに引きずり込まれて、今一度ドールの体内を求めていく。
「はぁっ、みおりさん……んんっ」
キスとキスの合間にほづみをちらと見ると、火照った双眸が天国にでもまみえた色を湛えていた。
みおりも同じだ。ほづみにかき立てられるものに殺されて、底なしの破滅に取り込められても、そこにあるのは楽園だ。
美しい。婀娜っぽい。扇情的だ。どんな口舌も及ばない。ほづみを抱く度にみおりを呑み込まんとする情動、例えばそれは、不法に取引される類のハーブを用いても、この愛慾に優る激烈な譫妄は体験出来まい。みおりはほづみというやんごとなき淫靡な姫君を、美しく、婀娜っぽく、どこまでも研磨する度に、確実に生命の一部をじわじわと削がれていく。心臓が、生来の健康的な機能でない、淫慾の焔を原動力にすげ替えようとしているようだ。
「勉強になった?」
みおりはほづみの唇に、指をすっと近づける。
妖しい舌先が伸びてきた。さしずめ風呂を上がったばかりのような指が、ドールの愛撫に小さく疼く。
「ふふっ、どう思いますか?」
みおりはほづみを抱き締める。さらさらの髪をもてあそびながら、汗で湿った髪に隠れた耳許に、ささめきかける。
「本番、いこっか」
「ふぇっ?」
「今までのは勉強。今からは、私がほづみで楽しむための、…………ほんとの遊戯」
* * * * * * *
「全く……困るんですよ。借家だからね、ここ。いやぁ、乱暴なことをしてくれましたね。非常事態とは言え、公共物破損ですよ。弁償して下さいよ、弁償」
「ごめんなさい」
「……ごめんなさい」
花叶の私宅の大家の部屋で、みおりは彼女と肩を並べて、小さく小さくなっていた。
大家は、さしずめ生きた化石だ。いかにも頑固親父という代名詞のしっくりこよう風格をしていた。
二人、厳めしい大家の責問に、一週間前の騒動について、厳しく指弾されていたところである。