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加虐の皇子と愛玩ドール
第9章 快楽誘引
米原智花(よねはらちか)。
それが女性の名前だった。
智花は新卒二年目の社員で、今は商品開発の補佐を務めながら、企画の見習いに日々をあてているのだという。はづるに引けをとらない清楚な見目に伴って、一度も果皮を剥かれたことのない漿果に通じる危うさがある。屈託ない表情、白い首筋、シャツに重ねたジャケットを無防備に押し上げる二つの弾力、しなやかな手脚──…智花が小股で動く度、タイトなグレーのスカートに、ふっくらとしたヒップラインが盛り上がる。
「初めまして。総務の塙岸みおりです」
よろしく、と、定型的な口舌が二人の間を行き交う。
「じゃ、お互い顔見知りになれたことだし、始めましょうか」
みおりと智花にやや打ち解けたムードが差し入ってきたところで、はづるの口調が一転した。
そこで初めて、みおりははづるの後方に据え置かれているパソコンデスクの上に、紙袋を認めた。
はづるはみおり達に指示を終えると、自分の仕事は片付いたと言わんばかりの顔をして、側のスツールに腰を下ろした。パソコンデスクに資料を広げて、クリップボードにボールペンを立てている。
みおりは智花を寝台近くにいざなった。はづるに預かった紙袋を下ろして、智花に業務に関する諾否を問う。案の定、はづるが二人を招集した意趣を今の今まで聞かされていなかったのは、みおり一人だったということが分かった。
はづるが紙袋に詰めてきたのは直径四センチメートルの振動機能付きディルド、ローター、簡易シリコン製ボンデージにアイマスクを始めとする定番商品、それからタグのないラブローションだ。
このラブローションが今日の要だ。
はづるに聞くところによると、ラブローションは品名候補「ロストバージン」、届いたばかりの試作品だ。破瓜を伴う房事でさえ狂おしいまでの快楽をもたらす画期的な催淫剤として売り込むつもりの製品だという。
ただし、ラブドラッグを処方したところで生娘がオーガズムに取りこめられた話は聞かない。はづるはまず社員を使って実験し、成功すれば、客がキャッチフレーズに文句をつけてこようが、個人差による効果の相違を指摘されようが、怖れるところはないと考えたのだ。ちなみにキャッチフレーズは、「当社のバージン社員もヌレヌレ!」である。