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加虐の皇子と愛玩ドール
第9章 快楽誘引
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「いらっしゃいま──…みおりさん!お疲れ様ですっ」
職場から地下鉄線の電車に揺られて数十分先、郊外にあるレズビアンバー『Gemini』は、今宵も安穏とした時の流れに存在していた。
常連客からすれば穴場、平日は客足もまばらな『Gemini』の店先に、みおりは例によって足をとめた。
カントリー調の木製の扉を開くと、真っ先に出迎えてくれたのは、目を瞠るまでに玲瓏たる少女だ。
くっきりした華やかな双眸、絹のように白い素肌、少女の癖一つない栗色の髪は腰に届くまでの長さがあって、ドビードットの薄手のブラウス、それから華やかな春先の花柄のワンピースでめかし込んである肢体は、ウエストのくびれ具合も確かめられないほど奢侈なものでも、パニエで膨らんだスカートから伸びたふくらはぎの妙なる線が、いかに彼女が優美な肉体の持ち主かを裏付けている。
まとう雰囲気はやんごとない。少女に備わる香り高い情緒は、仮にロリィタスタイルという人形めいた姿を気取らなくても健在だ。
宍倉ほづみ。
この店の店主、宍倉雅音の妹だ。
春から大学四回生で、今は春季休暇中、その間この『Gemini』で姉を手伝っているのである。一年先の入店に向けて、試用期間といったところだ。
「ほづみもお疲れ。雅音にこき使われてない?」
「こき使われるほどお客さん来てませんよぉ。そちらの方は?」
みおりがほづみのヘッドドレスを被った頭を撫でると、手のひらからボリューミーなレースが抜け出ていった。
ほづみのつぶらな黒曜石が、みおりの斜め後方に控えていた女性を覗く。
「初めまして。塙岸さんと同じ会社の、米原智花といきます」
「あっ、そうなんですか。どうりでスーツ……みおりさんと違って真面目ですね」
「ほづみ五月蝿い。ほづみだって仕事中なのにロリィタじゃん」
「えへへー。でもみおりさんは今のままが良いです。皇子様、今日も綺麗です」