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加虐の皇子と愛玩ドール
第9章 快楽誘引
数分後、みおり達のテーブルに、ピンク色の画用紙をトランプサイズほどに切り分けた札がばら撒かれた。
七枚ある。札はそれぞれAからFまでのアルファベットが、そして一枚だけ王冠のマークが記されていた。拙いながらほのぼのとした動物のボールペンイラスト付きだ。雅音が画用紙をカットして、ほづみが札を書いたらしい。
こうして雅音が即席で発案した王様ゲームが始まった。
参加したのはみおりと智花と唯子と笙、ほづみと雅、それからやや離れたテーブル席から場所を移してきた、玲乃(れいの)という名の飲食店勤務の女性だ。玲乃も『Gemini』の常連で、みおりも例のイベントを始め、ここで何度か接触がある。
みおりはゲームが始まると、まず七枚の札を検分した。裏側はどれも同じだ。縁に細工も見られなかった。
雅音が参加している所以も補翼して、みおりはようやっと警戒をといた。
事実、みおりもほづみも王様を引いた参加者に当てられることはなかったし、王様から出る命令も、今のところ公俗良序に触れない範囲に留まっていた。
「王様だーれだ」
「はいっ」
唯子がたゆみなく手を挙げた。
三度目だ。今宵も自宅にペットもとい肉体的道楽におけるパートナーを待たせて遊びにかまけているネットライターは、隣に落ち着いている玲乃の下着に片手をこじ入れてタチの乳首をつねったり、雅音に今日の排尿の回数を告白させたり、やりたい放題である。無論、王様の札を引いた勝者としての特権だ。
「怖ーいっ、また唯子?」
笙が軽くおどけたのにつられるように、玲乃やほづみも心なしか握った札のガードを固めた。
みおりも例外ではない。唯子には、夕餉からのべつ越境した話を酒の肴にされてきた。加えて唯子は王様ゲームに賛同した時、いやに乗った感じがあった。何らかの狙いがあるまいか。
「うーん……」
唯子の視線が笙を飛ばして、雅音、ほづみ、それからみおりの手許を短く捕らえて、玲乃の札も同じ風に見澄ました。
みおりは、最後に今また自分の手許に視線を感じた。
唯子の目は、やはりみおりの札を透かさんばかりに凝視していた。彼女が身体を褒め称えていたほづみ以上に、みおりの手許が同じ加虐の血の通った女に舌舐めずりされている。…………