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加虐の皇子と愛玩ドール
第10章 淫楽引照



 みおりは男の拘束をとき、花叶を纏縛からとき、ついでに衣服を整えさせた。



 零時を過ぎた深夜のマンション。

 夜のとばりの片隅で、姫スタイルの女と皇子とサラリーマンが三人、沈痛な空気感に顔を突き合わせていようとは、誰に想像出来ようか。



「まず花叶ちゃんに謝れ」

「ごめんな──」

「土下座」

「すっ、すみま──」

「私じゃなくそっち、まじ気持ち悪いからそっち」

「…………」


 男が、三つ指をついて花叶の前に改まる。たった今までの情けなさは消えていた。


「花叶」

「──……」


 花叶は、絨毯に額をつくサラリーマンを見下ろしていた。

「俺が悪かった。……すまない。お前はまめで、たまに自由にしたい時まで構ってくるから……疲れることあるっつーか……好きだけど、距離のとり方が……」

「──……」

「言えば良かったな。今度から、そうしよ。花叶も俺が素っ気ないくらいで、心配すんな。お前に俺が冷めるわけないだろ」

「…………」

「守ってやれなくてごめんな。会社でいやなことがあるなら、やめて、俺ん家来い。ストーカーに遭ってるなら──」

「あっ、違うの、塙岸さんは──」





 みおりは二人を残してマンションを出た。


 虫酸が走る慈善行為も、これで終わった。


 同じ職場の営業部に勤める花叶は、一ヶ月ほど前から恋人の暴力に悩んでいた。ことあるごとにみおりに泣きつき、時に深夜に呼び出して、縄をといてくれと請った。

 いつまでも痴話喧嘩に巻き込まれていては、みおりは自分の愛玩ドールと満足な夜も過ごせない。

 そこで今夜の計画が立った。

 みおりが花叶に想いを寄せた芝居を打って、恋人の前で辱め、彼女の有り難みを骨身に染みらせる。ただし、男の態度如何では、みおりは二人を別れさせるつもりでいた。


 まもなく私宅に至るところで、花叶からメールが届いた。

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─

みおりさんお疲れ様です。ο♡

遅くまで本当にありがとうございました。
今、彼とDVDを観ています♡
彼、まだ動転しててみおりさんのこと訴えるって怒ってますけど、訴えたら別れるって言い含めておきます!
ほづみちゃんに謝っておいて下さい(ó﹏ò。)

じゃあまた明日会社でー!

─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
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