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加虐の皇子と愛玩ドール
第10章 淫楽引照
「そうだ、お弁当準備しましょ」
「ほづみも手作り?」
「その言いようは、みおりさんもですか?」
ほづみの出した弁当箱は、一見、パステルカラーが基調のいかにもメルヘンテイストなものだ。蓋にデフォルメの動物がデザインしてある。中には、そのイラストがそのまま立体化したようなおむすびやら惣菜やらが盛りつけてあった。
「ほづみもデコ弁だったんだ」
「すごい、偶然ですね」
「元ネタも」
「……サン◯オ嫌いな女子は珍しいですからね」
二つの紙皿に各々の弁当箱から少しずつ、おむすびや惣菜を取り分けてゆく。
みおりの料理とほづみのそれは、ひとところになると見事なまとまりを見せた。
「いただきます。あ、みおりさんの紅茶は桜ですね」
「正解。ほづみのは木苺?」
「惜しい……ラズベリーです」
「あ、品名そっちだったんだ」
「片仮名か日本語かの違いですね」
二人、手を合わせて吟味を始めた。
海苔で器用に目と口が飾ってある卵焼きは、ミルクと砂糖で味付けしてあり、人参のみじん切りがくるんであった。
「美味い」
「みおりさんのも美味しいです」
「デコ弁、流行るのちょっと分かるかも」
「ですね。学校ある時もお姉ちゃんに言って作ってもらおっかな。……わぁ、この子リアルすぎて食べにくい……」
「食べさせよっか?」
「えっ?……あっ、……」
みおりはほづみの皿に乗った白い猫を箸で崩して、口に含んだ。
やんごとなきかんばせを支えた顎をくいと捕らえて、みおりはほづみの唇を塞ぐ。
「んっ、……」
リボンに使った梅干しごと、白米を唇の向こうに押し遣る。
「はっ、……」
ファーストキスを終えたばかりの少女のような顔のドールが、俯き加減に咀嚼を始めた。
「──……」
「恥ずかしがってる?」
「…………。……はい」
「帰りは雨だ」
「真剣ですってばっ」