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加虐の皇子と愛玩ドール
第10章 淫楽引照
「早速ヤッてるっ」
「…──!!」
聞き親しんだ声に耳を打たれ、弾かれるようして振り向いた。
ざっと六、七人の花見客が、植込みの切れ目を塞いでいた。
「お姉ちゃんっ?!仕事は?……っていうか、何で──」
「今日はこれが仕事。日頃ご贔屓にしていただいてるお客様達との親睦ね。私達は向こうでやっていたんだけれど、とてつもなく不愉快なことがあって。別の場所を探していたら、貴女達がいたわけ」
「…………」
雅音を挟んで唯子や笙、智花達が、神妙に頷いていた。
それからまもなくみおりとほづみは雅音に事情を聞かされた。
少し前、雅音はある経営教育セミナーで、大手ガールズバーを経営している企画部長と知り合った。話す内、雅音はある違和感に気が付いたという。サービス業を切り盛りしている同志としてではない、企画部長には、彼女自身の貢献するガールズバーがいかに優るかを雅音に誇示したがる態度が垣間見えたのだ。
客層を女性に限定されるだけでも大変なのに、そんな辺鄙な郊外に店を構えて、さぞご苦労なことでしょう。
企画部長の耳障りな笑い声は、以後、件のガールズバーの名称が雅音の耳に入る度、その癇癪を激昂させた。
「お願い!みおり、ほづみ」
「仇を打てって?」
「いいえ。私達が花見をしていた場所に戻って、ほづみをヤッてくれれば良いだけ」
「お姉ちゃん?!」
「……捕まるじゃん」
「ここと同じくらい人目はないわ。狭い会場だから。他の客は例の連中だけ。お客様も女性ばかり。萎える要素はないでしょう?」
「──……」
雅音は更に説明を続けた。
ライバル店の宴は、有志の従業員らがストリップショーを始めたことで、いやが上にも盛り上がりを極めている。通りすがりの客達まで足を止め、店に興味を示す始末だ。
『Gemini』がストリップショーにも匹儔するだけの余興を出せば、過去の屈辱を晴らせられる。
それが雅音の思惑だった。