この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
加虐の皇子と愛玩ドール
第11章 一対勾引
* * * * * * *
火曜日の朝、みおりはほづみと通勤ラッシュの電車に揺られていた。
春から四回生に上がるほづみは、明後日からの登校だ。ところが新入生を迎える準備のボランティアに駆り出され、早い時間に家を出ることになっていた。
耳に馴染んだ駅名が今また放送された時、ふと、みおりは肩に微かな重みを感じた。
「眠い?」
「いいえ」
ほづみは、パニエで膨らんだスカートを極力萎め、膝に抱えたバッグにフリルを折り込んでいた。
朝にシャワーしたばかりの髪は、いつになく潤沢を帯び、その栗色の絹が流れるこめかみは、造花とリボンとパールがあしらってある奢侈なコサージュに華やいでいる。無論、昨夜は一糸まとわず快楽にたわんでいた見事な肢体は、コサージュに見合った凝った洋服でめかし込んである。
「髪、みおりさんと同じ匂いだな、と思って」
「ああ、……」
みおりの首筋をくすぐる茶髪と、短く整えたホワイトブロンドの毛先が、一つの流れをなしていた。
シャンプーの後、同じヘアオイルで仕上げた髪は、言わずもがな同じフローラルブーケが香る。
「みおりさんって、確信犯でしょ」
「何の話?」
「巴山さんのことです。……何とも思ってないって、知ってるくせに、先週から……」
ほづみの微睡みの中にいるような目は、間近で見ると潤んでいた。
頰の血色が強いのは、果たしてチークが刷いてある所以だけか。
半分図星だ。半分は違う。
濡れごとに耽っている間に限っては、ゆかを引き合いに出したところで、ほづみの気位の高い口が柔軟になるわけではない。
さすれば何故、先週みおりはゆかの案に賛同し、わざわざ後日まで彼女の名前を持ち出したのか。
ただ一言、ほづみに言わせたかったのかも知れない。
ゆかの呼び水に喘いだドールの過失を非難して、みおりはほづみの過去さえ──…。