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加虐の皇子と愛玩ドール
第11章 一対勾引



 みおりがほづみを宥める間、荷台が運び込まれてきた。

 社員の一人が布を外すと、木製格子が現れた。ざっと十人の社員らが、ふらつきながらそれを下ろす。


 見覚えがある。格子は、何年か前に売り出された製品だ。一つ一つの木材は取り外し可能で、形状が自在に組み替えられる。


「さぁ、ほづみさん。桐原さん。洋服を脱いでその中央へ」

「えっ?」


 花叶の顔が、空耳でも聞いたように唖然とした。


「さっさとなさい。仕事よ。ほら」

「待って下さ──…えっ、もしかして先輩っ、……」

「あ、ごめん。黙ってるように言われていたから」

「いやです!」


 花叶が泣きそうな声を上げて、駄々をこねる子供の仕草で首を横に振りながら、その場に踏ん張る。

 はづるも負けじと花叶の腕を引っ張っていた。


「いや、じゃないわ。そんなわがまま、通用すると思っているの?」

「セクハラで訴えます!」

「貴女のクビを救ったの、私だけど」

「クビっ?!」


 はづるが深い息をつき、花叶の腕を離した。


 花叶の凜とした顔が歪み、腕が痛むのか、袖の皺を労わるようにして撫でた。


「営業成績、最下位なんですってね」

「──……」

「こういうことくらいでしか、会社に貢献出来ないでしょう」

「…………。それ、は……」

「見浦さん」


 資料を眺めていた珠子の目が、退屈そうにはづるに向いた。


「私達、暇じゃないの。早く始めてくれない?」

「桐原さん、早く……」

「分かりました。そんなに仰るならクビで良いです」

「そう。じゃ、これが最後よ。明日から来なくて良いわ」

「今帰ります!」

「見浦さん」


 またぞろはづるの花叶を引っ張る手が緩んだ。

 今度はみおりが呼んだからだ。
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