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加虐の皇子と愛玩ドール
第12章 錯綜同衾
春の暮れ、爽やかな暖気を連れた風が、花のような色彩のスーツに身を固めた女を撫でていた。
砂地に落ちた淡い影の片端を、橙色の哺乳類が這っている。
スーツの女、すなわちゆかの華やかで怪しくもある眼差しは、もっぱら四つん這いの哺乳類を纏縛していた。
哺乳類の肉体は、人間の女のそれだ。
肩に被さる黒髪は、女のいとけない顔かたちをひとしおうぶに引き立てており、潤沢のヴェールを刷いたごとくの柔肌は、完膚なきまで剥き出しだ。
「智花」
あけぼのの注ぐ眺めの中で、ゆかは愛玩動物の名前を呟いた。
ポシェットからソフトボールを抜き取った。そうしてゆかは、それを植え込みめがけて放り投げると、智花の首輪を繋いでいたリードを離した。
「はぁっ、……」
橙色の小動物が駆け出した。
首からリードを引きずった智花の足は、極めて鈍い。腿にプロテクターが巻いてあると言っても、二足歩行に適したペットは、フレキシブルな球体を唾液だらけにして戻ってくるまでに、ものの三分は必要とした。
良い子ね、
じゅるっ…………
ゆかが智花の口からソフトボールを取り上げたのとほぼ同時、肉厚の花びらの内側に溜まっていた水音が立った。
どれだけの愛玩、いかなる加虐に対しても、単純な性欲と期待とがただ疼く。ゆかに跪き、あるじがソフトボールを仕舞い込むのを見守る智花の乳房の先端は、彼女特有の好奇心に膨れていた。