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加虐の皇子と愛玩ドール
第12章 錯綜同衾
「残っている」
食事を終えた智花の容器に、ゆで卵のスライスが一枚取り残されていた。
「お行儀の悪い子」
「すみません……」
「食事も満足に出来ないのね」
無論、わざとだ。智花は常々食べ残しをする。
「すみません……──ああっっ」
ペチィィィッッ…………
ゆかの手のひらが智花の臀部を打った。
ぺちっ!!びしっっ…………
パァァァン…………ぴしっっ…………
「あん!……ん!っ、あぁぁん!!…………」
智花の上ずった呻吟は、ゆかの折檻を軽んじていた。
無理もない。ゆかとて智花の尻を殴る時に限っては、素手でも特異な感覚を得る。この快感が、被虐の体質のメスにも同量染み通っているのだ。
「…………」
「はぁっ、はぁ…………んん」
ゆで卵のスライスを、智花の口に押し入れた。
「ん、……」
ゆかの指がきゅううっとした。限度を知らない小動物は、時折、あるじの指を無遠慮に吸う。人差し指に通う血液が萎縮する痛み。これには慣れない。
だが、食べ残しを嚥下したあとでもむやみにまとわる智花の舌は、ゆかの憤慨を慰める。
ちゅる……ちゅる……てろてろ…………
総身に氷水が流されたのは、その時だ。
「…………!!」
午前五時半を回ったばかりの公園に、第三者の影が見えたのだ。
智花を隠すか、彼女に四肢をやめさせて、急遽逃げるか──…。
どのみち身元を押さえられては、事情聴取だ。
ゆかの脳裏を危機という二文字が掠めるや、ふと、懐かしいような感覚が肌を包んだ。