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加虐の皇子と愛玩ドール
第12章 錯綜同衾


「…………。え……?」



 予期せぬ影に、目を凝らす。


「ほづみ……?」

「ごめんなさいっ、見てません!見ません!ごめんなさい……っ」


 可哀想な通行人だ。

 ゆかのかつての人形は、覆っていた視界をほどくや、きびすを返して駆け出した。


「待ちなさい!ほづみ!」

 ゆかは、ほづみを呼びとめていた。

 単純な人間の本能がほづみの動きを止めたのか。それとも、かつてゆかをあるじとしていたドールの習性か。

 ほづみは立ち止まっていた。振り向くことはしないで、薄明かりの中にとどまっている。


 さく…………


 ゆかはほづみに距離を詰めた。

 後方から抱き締めて、智花の視線はものともしないで、着込んでいるにしてはふにゃりとした部位を掴んだ。

「ふっ、……」

「はしたない子」


 もにゅ、むにゅ……むぎゅぅぅ…………


「っ、あん……」

「今日、みほこが来ているの」


 小池みほこ。

 それはゆかの従姉妹であり、ほづみがかつて恋い慕っていた少女の親友の名前だ。

「はぁ、はぁ……」

「学校までまだ時間はあるでしょう?」


 …──下着もつけないで歩き回ってる、猥褻な根性を罰してあげる。



 ゆかは、ほづみのマシュマロの質感の耳朶に噛みついた。
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