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加虐の皇子と愛玩ドール
第12章 錯綜同衾
* * * * * * *
「塙岸先輩っ」
聞き親しんだ声に顔を上げると、さっき地上で見かけたツツジの色を彷彿とする後輩が、みおりの隣に腰を下ろした。
時刻は朝の八時過ぎだ。
会社員にサービス業の人間、学生──…多様な乗客達が倦怠感を撒き散らす中、彼女の存在感はいやが上にもあでやかだ。花叶は脱色した巻き毛をきちんと結い上げ、垢抜けた化粧を施した顔を綻ばせていた。
「おはよ」
「おはようございます」
同じアダルトグッズの製造販売メーカーに勤務しているだけあって、みおりは花叶と頻りとこうして乗り合わせる。
部署の異なる二人が親しくなったのは、この時間帯の電車が一役買ったのではない。営業部に属する花叶はそのくせその行為に苦手意識を持っており、事実、その成績は思わしくない。みおりは、ことあるごとに花叶の管轄を引き受けて、ノルマを請け負っていたのである。
「今日も可愛いね」
「お世辞言っても何も出ません。先輩こそ華やかですね」
「聞き飽きてる」
「ほづみさんほどではないんじゃないですか?」
「これも相当だよ」
ホワイトブロンドの短髪に、紺やチャコールグレーを基調とした皇子服。
奢侈なディテールにフリルやレースが至るところにあしらってあるこのスタイルは、とりわけ中性的と評価されがちなみおりの容姿を実際以上に華やがせ、良くも悪くも二言三言の対象になっていた。