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加虐の皇子と愛玩ドール
第12章 錯綜同衾


「お似合いになるから良いですよねぇ……。もうすぐゴールデンウィークかぁ」

「突然だね」

「みおりさんは、予定ありますか」

「ほづみと旅行」

「っ、……。…………そうなんですか」

 空いた間は、妙な数秒間だった。

「花叶ちゃんは?」

「うーん、えっと、……うーん……行っちゃおうかな
、と、思うんです」


 不都合な話を切り出す時、屡々まごつく人間がいる。

 みおりにとって、花叶は分かりやすすぎた。


「悪いこと訊いちゃったかな、一人──…」

「いえ!ぼっちで過ごすとか、そんなんじゃないんです!ってか、ぼっちでも楽しいですよ……」

「同感」

「良かった」

「悩んでるの?どこに行くの」

「あー……その、ん。あたしも、そろそろ」


 学生達の談笑が、良い塩梅に、みおりと花叶の雑談をかき消していた。

 やはりもじもじとした態度の後輩は、やがてぽってりとしたピンク色に染まった唇を開く。

「合コンです」

「そっか」

「あたしもいつまでも引きずってられないなと思いまして。今度は、塙岸先輩みたくカッコイイ人を探します」

「光栄だな。……オスの中からじゃ難しいと思うけど?」

「ふぇっ、……」


 小さな肩を抱き寄せて、頬に落ちた巻き毛を掬った。

 いたずらに花叶にささめきながら、みおりの中で、確信にも似通う憶測が輪郭を見せる。


 先月、花叶は長年交際していた恋人と離縁した。発端は男の暴力だ。みおりは花叶を救うべく、男の前で彼女を快楽にとりこめた。男は花叶の有り難みを再確認し、二人は和解したものの、当人の関心は男からみおりに移った。

 もっとも、ことの顛末は本人から聞いたのではなく、偶然耳に入った話だ。
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