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加虐の皇子と愛玩ドール
第2章 暴虐願望
みおりは志代果と別れると、表通りのカフェへ向かった。
開放感溢れる店内は、外からでも様子が覗ける。そのフロアの一角に、一人の女性の姿があった。
女性は、きりっとしたつぶらな目許にシャープな輪郭、焦げ茶の巻き毛はアップに結ってあって、遠目からでも分かるほど華やかだ。フェイクファーのティペットが襟元を飾ったサーモンピンクのカットソーに、デニム地のフリルスカート、その装いは、今の時期にしては少し薄い。
彼女の名前は桐原花叶(きりはらはかな)、みおりと同じアダルトグッズの製造販売メーカーに勤務している営業部社員だ。
「やったぁ!本当に、本当に、助かりました!」
みおりは花叶の五月蝿いほどの拍手を浴びせられながら、ルージュの残ったティーカップの傍らに、書類を置いた。
「本当に有り難うございます、先輩。あたし、冬休みまで売上が上がらなかったら、減給されるところだったんです。先輩は同じ部署じゃないのに、こんなあたしのこと気にかけて下さって、本当に本当に優しいです!」
「気にしないで。誰にでも手を貸してるわけじゃないし、花叶ちゃんはたまたま気になっただけ。あとあの社長、面白かった」
「あんな生徒指導部の先生みたいに頑固な人、面白いですかぁ?あたしなんて、オファーの電話をかけた時点で、受付の人に無下にされました。一体、どうやってオファーと契約とったんですか?」
みおりは、ここ数日の流れを思い起こす。
確かに志代果の会社のガードは固かった。
みおりが電話をかけた時も、電話番は、用件がセールスだと分かった途端、社長の出勤スケジュールが分からないと言い出した。そしてすみやかに受話器を置きたがったものだ。