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加虐の皇子と愛玩ドール
第12章 錯綜同衾
半日かけての観光は、朗らかで明るい時間をみおりに与えた。
清純な少女を気取ることに長けたドールは、友人のようにみおりに笑い、妹のようにじゃれついて、恋人のように戯れる。
莫大な枚数の増えたカメラアプリのデータは、ホテルに戻る頃、整理も難儀になっていた。テディベアミュージアムの土産物屋で雅音や花叶に記念品を吟味したついでに、みおりとほづみも揃いのマスコットを選んだ。
家族連れが目立つホテルは、ゴールデンウィークの催事が開かれる時間帯、温泉やラウンジはがら空きだ。
二人、露天風呂を堪能し、恋人同士よろしくいたずらに身体を触り合い、物珍しい鏡張りの回廊を渡ってラウンジへ入っていった。
「かんぱーいっ。お疲れ様です」
「乾杯。お疲れ」
色とりどりのライトが流星よろしく交差している店内を背に、ほづみがグラスを傾けた。
最低限の明かりだけで目路を押さえた空間は、それでも雅音の店に比べて甚だ明るい。
遠くでルバーブの香る、葡萄酒をジンジャーエールで割ったキティ。ぴりりとした芳香な苦味を味わって、カシスに染まったスパークリングホワイトを唇に含むほづみを横目に、オードブルを取り分けた。
「はい」
「有り難うございます」
ハーブの効いたチーズやチキンのカナッペに、オレンジ風味のオリーブベースのマリネ、男爵のニョッキ──…みおりはほづみの味覚を心得ていた。トマトより人参の比率を高めるのも要だ。
「ん。美味しいです」
「オリーブすごい効いてるな。ぼとぼと」
「それが良いんです。あ、このグリッシーニ、みおりさん好きそう」
「どれ。…………ほんとだ。表面さくさく」
「細いのにさくさくなのが好きなんですよね」