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加虐の皇子と愛玩ドール
第12章 錯綜同衾


「はい、ほづみ」

「えっ、……」

「あーん」

「はい、……じゃあ、いただきます…………」

 続けて掬った濃ピンクの塊が、懐疑を知らない唇に含まれていった。


 妖艶だ。無邪気な口舌を操っても、ほづみの所作は、はしたないまで劣情を煽る。

 ただシャーベットを与えただけ。それだけのために使用したスプーンさえ、みおりの中で、ほづみが舌をまといつかせる性具に見えた。



「なんか…………眠たく、なってきたかも…………」


 端然たる潤みを帯びた双眸に、乳成分のトリプトファンが効き出した。

 もっとも、シャーベットのミルクがほづみを眠りに誘い込んだわけではない。

「…………」


 僅かに残ったトリプルベリーが白い皿を染めていた。

 最後の数口を掬いたがっていたほづみの指が、スプーンを支えている力もなくす。

「あれ……なん、……で…………」

「ところで、ほづみ」

 みおりはほづみからスプーンを抜いた。

「この間、巴山さんと智花に聞いたんだ」

「っ、…………そ、……」


 それは──…。

 戦慄した唇は、されど息を吐き出すこともままなくなっていた。


 おやすみ、ほづみ。


 みおりは、糸の切れたドールの上体を抱き寄せた。
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