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加虐の皇子と愛玩ドール
第2章 暴虐願望
「うん、やっぱり、触り心地がいまいち」
「ぅ……それって……」
「ほづみの所為じゃないよ。コートが厚くて」
「──……」
それでも、ほづみの表情が、声が、雰囲気が、理性にじわじわ皹を入れてくる。
みおりはほづみの頬の重みを肩に感じて、抱き寄せた腕に力を入れた。
「デコレーションケーキは好きだ。けど、私の快楽は、スポンジ生地から調理するところにある」
「私がデコレーションケーキなら、みおりさんはデビルスケーキですね」
「チョコレート、欲しい?」
「本物より甘くて苦いのが欲しいです」
「…………」
みおりはほづみを壁に押しつけて、やはり幻か本物か分からないほど柔らかな、その唇をキスで塞いだ。
角度を変える度に物欲しげな吐息のこぼれる二枚の花びらを啄んで、時折、マフラーの脚をきゅっと引っ張ってやると、小さな悲鳴がいっそう顫える。
「気持ち良いの?」
「なんか……みおりさんに首、絞められてるみたいで……」
「いやらしい愛玩人形だ」
「んっ……」
みおりは耳を済まして電車に乗り損ねないよう注意しながら、ほづみとのキスに溺れていった。
* * * * * * *
みおりは一人で起臥しているマンションの自室に帰り着くと、風呂を沸かしてほづみに勧めた。
これだけ濃密な触れ合いをしている仲で、しかもみおりにとってほづみは、平たく呼べばセックスフレンド、露骨に呼べば情婦も同然の存在だ。
それでも、あの夜から一週間、今日が初デートと言っても嘘ではない。帰宅して、いきなり寝室に転がり込んでは、あまりに無粋だ。
みおりはほづみが入浴している間に、簡単な夕飯の準備を進めた。雅音から仕入れた情報を基に、ほづみの好んでいる缶入りカクテルも、しっかり準備してあった。
「みおりさーん」
浴室から、甘ったるい呟くような声が聞こえてきた。
「みおりさーーん」
声は、次第に、情けないようなトーンになっていく。
みおりは、ほづみの声に数回呼ばれて、それでも呼ばれ続けると、渋々浴室へ向かっていった。
暖簾だけに保護された脱衣所から、嗅ぎ慣れたシャンプーの匂いがしていた。