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加虐の皇子と愛玩ドール
第2章 暴虐願望
「何?」
「あっ、みおりさん!お洋服知りませんか?」
ほづみの声が明るくなった。
みおりは、もちろん、ほづみの洋服の行方を知っている。豪奢なピンク色のロリィタ服だ。
「寝室のクローゼット」
「えっ?!今、着るんですけど。あ、そう言えば下着も」
「下着もクローゼットに預かってる」
「今、つけるんですけど」
「タオルない?」
「あり……ます」
「ほづみってさ、私の何?清純な高校生じゃあるまいし、ご主人様の家にお邪魔した時の礼儀くらい、心得えておけよ」
「──……」
薄い暖簾の向こうから、ほづみのもそもそ動く気配がした。
みおりはキッチンへ戻っていって、夕飯の準備の最後の仕上げにとりかかる。
リビングのテーブルに、ストロベリーサワーカクテルとシャルドネワイン、サラダを添えたブルーチーズのパンケーキ、それからスープとチキンのマリネが並んだ。
みおりがソファに腰かけると、ふわっと、さっきのシャンプーの匂いがした。
出入り口の扉の側に、ほづみの、バスタオル一枚に身体をくるんだ姿があった。
みおりはほづみを真隣に座らせて、夕飯を進めていた。
みおりはパンケーキを一口サイズに切り分けて、それをほづみに食べさせた。そしてほづみにチキンのマリネをかじらせて、唇から唇へ移してこさせた。みおりはほづみのタオル一枚に隠れたウエストを引き寄せて、湯上がり独特のもっちりした肩や腕の質感をまさぐった。敏感な太ももを撫でさすっては、小さくひくつく身体の反応を楽しんだ。
二人の話題の中心は、ほづみの学校生活だ。
ほづみは現在大学三回生で、人間科学を専攻している。ゼミナールでは、官能小説から読み解く人類史を突きつめているという。
「同じ官能小説というジャンルに区分されていても、誕生した時代や国ごとに、相違があります。風土によって異なる傾向、性癖、願望、或いは社会背景まで、物語から割り出せます。大奥のように一夫多妻が当たり前の時代もあれば、浮気で処刑される国もあったようです。古き時代の官能小説は、当時の文化の記録帳とも呼べます」
「ほづみのお気に入りは?」
「シャステル・マリナーの、『血枷』です」
ほづみの上気していた頬が、ひとしお血色を深めた気がした。