この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
加虐の皇子と愛玩ドール
第2章 暴虐願望
みおりはストロベリーサワーカクテルを一口飲んで、ほづみの声に耳を傾ける。
「シャステルは孤独な作家でした。貧しい家庭に生まれ育って、同年代の友達と遊んだり、恋をしたりする暇もなく、二十代の頃まで働きづめだったようです。けれどある時、シャンテルがホテルの従業員として勤めていた頃、深夜の客室から不思議な声がこぼれてくるのを聞きました。そして、音」
「女が女を鞭打って、喘がせてたって?」
「ほぼ正解です。そのお客さん達は、毎月、ホテルに泊まりにくるようになりました。シャンテルは、いつしか、その二人の令嬢達の寝室に、自ら居合わせる空想を重ねるようになります。消灯時間の過ぎた廊下で、一人、情事の音声を聞きながら、自慰をします。それが、彼女が性に目覚めたきっかけでした」
「なるほど。それで、あいつの書く小説は、自慰の話が多いんだ」
「読んだことあったんですね」
「上司に勧められて。『血枷』もラストだけ知ってる。恋人に殺してくれって頼まれて、尚且つ、いまわの際に自慰を見せろって要求される話だろ。あとがきに、作者の願望だって説明されてた」
「はい、あの話は……だって……あっ……」
みおりは、ほづみの腰かけている真ん前に乗り出した。
そしてほづみの太ももの側に片膝をかけて、ソファの背もたれに片手をつく。
みおりがほづみの顎に指先をかけて、くいっと上を向かせると、たゆたう大きな目が間近になった。
「私は『血枷』より『暴虐』派」
「あっ、私もです。あれはときめき──…ん、んん……」
みおりは、ほづみの唇に自分のそれを押し当てた。
喧騒としたホームで交わしたよりずっと深くて、ずっと野性的なキスを求める。
「んっ、……」
ほづみの片手をぎゅっと掴んで、簡単に開く唇の向こうの歯列をなぞる。顎に添えていた指先を首筋、鎖骨へ滑らせていって、熱い舌先をひと撫ですると、唇と唇の間にほんの少しの隙間を開けた。
「ほづみのときめきは、私の願望」
「え……」
「『暴虐』の通りにしてやるよ。ほづみは、あの主人公みたく、ご主人様に滅茶苦茶にされたいんだろう?」
「あっ……はぁっ……」
薄いバスタオルからはみ出た乳房を揉み出すと、気を遠くしたような悲鳴がこぼれた。