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加虐の皇子と愛玩ドール
第3章 人形実験
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塙岸みおり(はなぎしみおり)の勤務しているアダルトグッズ製造販売メーカー本社は、駅前近くのオフィス街の裏手にある。
その佇まいは、ごくありふれた感じのビルだ。地上は五階、そして地下は二階まで続いている。
地下は、全て商品開発部のための施設だ。事務所を始め、週一のペースで新製品のプレゼンテーションが行われる会議室、倉庫やら仮眠室やらホールやら、その設備は至れり尽くせり、万全だ。
みおりは十二月のとある昼下がり、この商品開発部の事務所にいた。キーボードを打つ音が行き交う中、日の光も差し込まない密室で、書類の束と奮闘していた。
書類は、定期的にモニターから収集されてくるアンケートの回答用紙だ。
「お疲れ様です、塙岸さん。いかがですか?新製品の試作品の評判は」
みおりが知的なメゾに振り向くと、斜め後方にかっちりしたスーツに身を固めた女性がいた。
女性のシニヨンに結った黒髪は、フェイスラインに沿って流れる後れ毛が、ほんの少し遊ばせてある。その清楚なかんばせは、必要最低限の化粧が施してあるだけだ。肌は、いかにも三十代後半らしく、妖しい艶と瑞々しさとが共存していた。
商品開発部長、見浦はづる(みうらはづる)だ。
「評判ですか?ばらけてます」
「そう……。試作品を配って試用していただくモニターは、お得意様に絞っているんですけれど。意見は分かれるものですね」
「ただし、百パーセントに近い意見を選ばなくても、売り上げが低迷するわけではないんでしょう?例えば、お客さんは気に入った商品が理想の値段でなくても欲しければ買いますし、日頃は気にも留めない商品でも、売り場にあれば興味を持ちます」
「はい、有り難いことに。だから、大抵、三十パーセントを越えた意見は、大切にする方針です」
隣にはづるが腰かけてきた。
みおりは、アンケートの集計作業を再開する。