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加虐の皇子と愛玩ドール
第3章 人形実験

「塙岸さんって、お洒落ですね」

「そうですか?」

「ロリィタさん……、とは、また違うというか。いつでもレースたっぷりのブラウスに、皇子様みたいな上着やボトム。綺麗な金髪で、歌劇の役者さんみたい」

「ああ、見浦さんみたいな人には、よく言われます」

「やっぱり?」

「実際に着てない人って、分かんないそうですね。皇子とロリィタの違いはもちろん、ロリィタとメイドの違いも分からないとか。ま、私みたいな人間が、ナチュラルガーリーと森系の違いが分かんないようなものかな」

「塙岸さんでも、ファッションについて分からないことがあるんですか?」

「伊達にアダルトグッズ製造販売メーカー勤務じゃありませんから。常にアンテナを張っているのは、服よりその中身です」

 やにわに、ふぅっ、と、音にならないほど微弱な吐息が耳に触れてきた。

 否、吐息ではない、溜め息だ。

「どうされました?急に。恋煩い?」

 みおりの手元の書類の山が、いかにもいかがわしいカラー印刷の用紙で覆われていった。

「これは?」

 みおりは、はづるが差し出してきた用紙を拾い上げる。

 用紙は、コンピューターグラフィックの少女がエロティックな下着をつけた絵型やら、中世の拷問用具を聯想する、それにしては可愛らしい感じのタッチの玩具の図案やらが、たくさん盛り込んで載っていた。

「次の新製品の候補です。実はいくつか、試作品が出来ていて」

「良いですね。このベビードール、ちょっと好きかな」

「本当ですかっ?!あ、これは?」

「レオタードですか?」

「ただのレオタードじゃないんです。伸縮生地で出来ていて、着用すると、タイツみたいに透けます。それから、ほら、股に穴が空いていて、ヴァギナが丸見え」

「ちょっと水着プレイみたい。私、コスには興味ないしなー……」

「刺激が足りないんですね?大丈夫です。同シリーズのこのディルドを使えば、刺激が備わります。ほら、こっちは斬新でしょう?」

 みおりははづるの示した絵型の補足を読んで、なるほど、と、納得する。

 ディルドの方は、はづるが自慢げに推してくるだけあって、従来の機能だけが備わっているのではなかった。
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