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加虐の皇子と愛玩ドール
第4章 懲罰指導
「私にどうしろと?」
「まず、許可を頂戴」
「大した度胸だ。君には強制猥褻未遂で、今から出頭してもらう」
「ウチの大学部、教授室の奥に、資料準備室があるの」
「──……」
「今、教授室には空きがある。私は、そこで宍倉さんとの面会を願い出るつもり。貴女、奥の部屋で私のお手並みを見る気はない?」
「私に何のメリットが?」
「あると思うわよ」
「…………」
みおりはしづかの勝ち気な秋波に、快楽的な気配を見出だす。
* * * * * * *
年が明けて二度目の週明け、みおりはほづみの通っている大学を訪ねていった。
みおりは、何度か改修されたらしい、綺麗な校舎の聳え立つ、開放感溢れる学内の敷地に踏み入ると、しづかに指定されていた校舎を目指した。それからひんやりした廊下を渡って教授室の密集したフロアに昇ると、指定されていた扉を開いた。
主のいない教授室のソファに、生徒指導部らしからぬ本性を隠し持った品行方正な顔の教師が、その肩書きに相応しい、つまらない装いでふんぞり返っていた。
みおりはほづみが訪ねてくるという時間になると、しづかと打合せしていた通り、奥の資料準備室に身を潜めた。
馬鹿げた茶番に付き合っている。生まれてから今日までの二十九年、逃げ隠れする概念を持たなかった。
そんな自分自身が、今、真剣にかくれんぼをしている。滑稽だ。
それでもみおりは、しづかの仄めかしてきたこの計画の先ゆきに、少なからず期待していた。
「失礼します。海馬先生……!お久し振りです」
ノックの音、扉の開く音に続いて、凛とした鈴を転がすような声がした。
みおりが扉に備えつけられた小さなガラス窓を覗くと、見知った少女が、しづかに向かって、恭しく腰を折っていた。
透けるような陶磁肌に、腰まであるさらさらの栗毛、その身体は豪奢なレースやリボンがたくさんあしらってある白いワンピースで装ってあっても、類稀なスタイルだと一目で分かる。
ほづみは、見目だけならさしずめ高貴なドールだ。
みおりは小窓から離れて、扉の側に背を預ける。
暫しの間、教師と生徒が久々に顔を合わせた場合にお決まりの、ありきたりな台詞が交わされていった。