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加虐の皇子と愛玩ドール
第1章 公開遊戯

「あっ、はぁ、こんな風に……こんな風にします……乱暴に胸を揉みながら、はぁぁっ、私……自分の指だけじゃ、足りなくて……」

 栗色の髪が、さらりと揺れた。

 その瞬間だ。

「…──!?」

 視界が、眩しすぎる光に塞がれた。

 みおりはほづみを抱き寄せる。

 ややあって、くすくす、と、女性の笑う声がした。

 みおりは、その声の主を知っている。

 顔を上げると、やはり、今日の昼間のメールの主がそこにいた。

 ここ『Gemini』の店舗責任者、雅音だ。

 卵形の輪郭に、涼しげな一重の目許に通った鼻梁、唇は、すましたような形をしていて、その黒髪は胸を覆うほどの長さがある。歳は、今年で三十だ。
 そして雅音は、シンプルな黒いチュニックに、タイトなスキニーパンツという、今日も飾り気ない出で立ちだ。

「雅音……今までどうして……」

「お姉ちゃん!どういうつもり?!」
  
 みおりがほづみをちらと見ると、彼女は実姉に非難の目を向けながら真っ赤になって、失神しかねない顔をしていた。

 雅音が満足そうな微笑を浮かべた。

「後生よ、貴女達にお願いがあるの」

「お願い……?」

「ほづみ」

 雅音がほづみににこりと笑った。

「みおりのこと、気に入った?」

「だからどういう──」

「明日の『Gemini』のイベントで、彼女とショーをやってもらう」

「雅音?!」

 今度はみおりが声を上げた。

「ほづみは知っている通り、ここのバー、立地がいまいちな所為で、都心にお客様が流れてしまうの。先月も、先々月も、そのまた先月も、昨対が下回っている。このままじゃ今月も赤字寸前」

 そこで、と、雅美の秋波が、壁の一角に注がれた。
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