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加虐の皇子と愛玩ドール
第5章 公認遊戯
* * * * * * *
翌朝、みおりはほづみが出掛けていくと、朝食の片付けを済ませて掃除を始めた。
ほづみには、三日くらい家事を放ったらかしにしていたところで何ら問題もないと言って恐縮されたが、何分、夕方まで退屈だ。みおりはほづみに掃除機やら洗濯機やらの使い方を聞き出しておいて、午後は家事に専念した。
如月の日暮れは早い。みおりは、ほづみの補講がお開きになる時間が近付くと、黄昏の住宅街を後にして、電車に乗った。それから慣れ親しんだ郊外に出ると、数日前、ほづみの恩師を交えてひと悶着あった大学へ向かった。
「みおりさん」
みおりが付近の小さな書店に入っていると、聞き親しんだ声が聞こえた。
陳列棚から視線を外すと、昨夜とは打って変わって奢侈にめかし込んだドールが、にこやかに駆け寄ってくるのが見えた。
長い髪には造花をメインにパールやチュールが寄せてあるブーケのキャノティエ、ほづみの艶やかな唇は赤みがかったグロスの煌めきをまとっていて、昨夜あれだけ淫らに踊った肉体は、ふわふわのフェイクファーのあしらってあるアイボリーのラメワッフルコートに包まれている。中に隠れたパステルピンクの十段フリルのハイウエストワンピースから覗く同系色のトーションレースが、コートの裾からちらついていた。
「お疲れ」
みおりは裾に蝶のフロッキー加工が施してあるチャコールグレーのコートを翻して、ほづみと並んで書店を立ち去る。
休日を返上させられたのは、ほづみだけではなかったらしい。町外れの道端に、大学生と見られる若者達が、思いの外に散らばっていた。
「友達は?」
「今日は、謝って帰ってきました」
「良かったの?」
「昨日お夕飯ご一緒しましたもん。今日はみおりさんと一緒が良いです」
みおりはほづみと、とりとめない話を交わしながら最寄り駅まで戻っていった。途中、ほづみと顔見知りらしい少女達の団体に、ちらちら見られて黄色い声を上げられたのを除いては、実にまったりとした帰路を辿った。
電車で十五分揺られる間、肩に、ふんわりした重みが乗っかってきた。
みおりは聞き覚えのある駅の名称がアナウンスされるとほづみを起こして、二人、元いた町へ帰っていった。