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加虐の皇子と愛玩ドール
第5章 公認遊戯
* * * * * * *
ほづみの料理は格別だった。
みおりは、自分が家庭の味に飢えていたのを差し引いても、今夜の夕餉を手放しに称賛出来た。
「美味い。ほづみ格好はふざけていたくせに、やるじゃん。真面目に作ってくれてたんだ」
「当たり前です。……みおりさん、私がどういう風にお夕飯作っていたと思ってたんですか」
「一人でヤりながら」
「ヤりません」
見目だけならお高くとまった姫君の姿を象ったドールの唇が、つんと尖った。
みおりはほづみをなるべく視界に入れないようにして、食事を進めていた。
ほづみは未だエプロン一枚だ。まともに直視していれば、確実に、食事ではなく別のものを口にしたくなろう。折角ありつけた手料理を、みすみす喉に詰まらせたくない。
「味噌汁は熱々だし、私、こういう豆腐より大根が多いの好き。それにご飯。ほづみも硬めの食感、好きなの?」
「みおりさんもですか?はい。あんまり柔らかいのは苦手で……お味噌汁も、お豆腐がたくさんだと、お腹重くなっちゃって」
「マゾと味覚が合うなんて、微妙だな」
「もうっ。あ、そうだ。このレンコンと春雨のおひたしは、いかがですか?」
「これも手作り?さすがに惣菜売り場のかと」
「手作りですよ。ニンジンを和えて、お揚げを入れて、白ゴマ振って、これ、お姉ちゃんの得意料理の中で好きなもの上位に入るので、教えてもらったんです」
「女子力高ー。……ほづみ。美味すぎて食べるのもったいなくなってきたんだけど、どうすれば良い?」
「っ、……」
みおりの視界の隅っこで、ほづみの息を飲んだ気配がした。
「みおりさん、良い旦那さんになれます」
「はい?」
「あ、少し前にゼミで紹介された官能小説の世界では、男性は結婚してカップル気分が抜けると、奥さんの手料理を、出前か何かの扱いしかしなくなるんです」
「不倫ジャンルの定型か」
「みおりさんなら、浮気されることないのに」
「私には関係ないことだ。第一、男になるなんて勘弁」
「皇子様なのに」
「嫌いなものにはなりたくないだけ」
みおりは茶碗を平らげて、ほづみの身体を引き寄せた。小さな顎を持ち上げて、目と目が合う角度にすると、その唇をキスで塞ぐ。
「ん……」
最後の一口、甘くて硬い白米が、ほづみの口内に流れ込む。ごくん、と、喉の鳴る音がした。