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加虐の皇子と愛玩ドール
第5章 公認遊戯
* * * * * * *
みおりはほづみを寝室へ運んでいって、キッチンを手早く片付けた。
雅音が時間を稼いでくれた甲斐あって、姉妹の両親が入ってくる頃、リビングは、テーブルに空き皿やカップが残っただけの状態に戻っていた。
それからみおりは、雅音に別室へ連れて行かれた。物置倉庫に使われているらしい、小さな部屋だ。
「というわけで、みおりはほづみの恋人という設定になっている。黙って話を合わせておいて」
「……何で?」
みおりはすっかり遊び疲れた佇まいの友人に、不満を訴えんばかりの目を向ける。
卵形の輪郭に、涼しげな一重の目許に通った鼻梁、その風貌こそ変わらないのに、雅音の胸を覆う長さのある黒髪はラフなシニヨンに結い上げてあって、露になった首筋がいつにも増して艶やかな質感を主張していた。装いは、普段のシンプルながら気取った感じと打って変わって、ロゴ入りのトレーナーにジーンズというものだ。温泉や観光をいかに満喫していたか、存分に伝わってくる。
「とにかく、頼むわ。ほづみは私が面倒を見ていると言っても、親にしてみれば大学生。私の留守中、代わりに友達に面倒を見させていたなんて言ったら、寝込まれる。だからってセフレだなんて言えない」
「私は構わないけど」
「ほづみを実家に連れ戻されたら、会うのに電車一時間はかかるわよ」
「──……」
「お姉ちゃーん。お帰りなさいー。みおりさん、着替え有り難うございましたぁ」
にわかに開いた扉から、姉とは似ても似つかない、華やかな顔がそっと覗いた。
ほづみと雅音の母親は、名前を宍倉小松(ししくらこまつ)、父親は宍倉嗣朗(ししくらしろう)といった。二人とも年のほどは見た感じ五十代後半、ありふれた感じのパートナーだ。
みおりはほづみと並んでソファにかけて、雅音は一人がけのソファにクッションを敷いたところに、そして小松と嗣朗は簡易椅子に落ち着いていた。
五人、ほづみの淹れてきてくれたパッションフルーツのホットティーを味わいながら、和気藹々とした時間を共有していた。ただし、姉妹の両親だけは、右手に紅茶、左手にビールという組み合わせだ。