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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり
「あの……ありがとうございました。お蔭で怪我をせずにすみました」
まだお礼も言っていなかったと、リンゼイは頭を下げる。
「いえ。ご無事でなによりです」
ジョシュアににこりと微笑まれ、なぜか胸がざわつく。
全速力で走っていた先ほどより心臓が早鐘を打ち始め、顔が火照ってきてしまう。胸が苦しくなり、息苦しささえ覚えるほどだ。
自分はどうしてしまったのだろう?
階段から落ちかけて、まだそのショックが残っているのだろうか。彼が受け止めてくれたのだから、どこか打ちつけてということは無さそうで、そうに違いない。
にしても、どうしてジョシュアの顔を見て胸が苦しく……?
「お顔が赤いようですね。一応医師に見せ、部屋で休まれたほうがいいでしょう。ジョシュア、王女を部屋へ送って差し上げなさい」
「リンゼイなら俺が送ります」
リンゼイの異変に気付いたレオナルドがジョシュアに命ずるも、黙っているスチュワートではなかった。
リンゼイは反射的に縋るような視線をジョシュアに投げてしまう。貴族の子息相手に一介の執事がどうこう出来もしないのにだ。
「ここは私の執事にお任せください。──ジョシュア」
「畏まりました。王女さま、失礼いたします」
リンゼイがスチュワートを苦手としているのを察してか、レオナルドが助け船をだしてくれた。
これでスチュワートから離れられると安堵するも、胸のざわつきの正体を探れないままジョシュアに付き従われ部屋へと戻るのかと複雑な気持ちでいると、一層リンゼイを狼狽えさせられる行動をジョシュアは取った。
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