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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり




 ジョシュアは腰を折ると、なんとリンゼイを抱き上げたのだ。


「きゃ……! あ、あの……!?」


「足首を挫いていらっしゃるといけませんので、このまま運ぶ無礼お赦しください」


「どこも痛くは……」


「のちのち痛くなることもございますので」


 背丈の差があり、遠かったジョシュアの顔が抱き上げられ間近に迫り、身体のどこも痛くないのに心臓が縮こまって痛い。


「おい! 気安くリンゼイに触るなと……!」


 リンゼイがジョシュアの腕で身体を固くして運ばれていると、スチュワートが騒ぐ声とそれを宥めるレオナルドの声がしていたが、彼女の耳は自らの心臓の音で埋め尽くされ聴こえてはいなかった。





 ジョシュアに運ばれる道中、驚いて駆け寄る使用人の声も耳をすり抜けるのに、医師を呼ぶよう指示する彼の心地いい声だけするすると入っていく。


 見慣れた贅を尽くした王城の内装も、完全に過ぎ行く風景と化してしまっている。


 上等なクリスタルを使ったシャンデリア、アズライトやエメラルドなど様々な宝石を埋め込んだ、城自慢の壁画。


 見慣れていてもリンゼイは宝石そのものより、それらが放つ不思議な輝きと力を見るのが好きだったのに、どういうわけかずっと胸が騒がしいままだ。






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