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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走
──トン、トン
「失礼します、リンゼイ様」
ノックのあと、待ち受けていた人物の声が扉の外からした。
「こちらにお願いできますか」
「はい」
寝室から声をかけると、カートの転がる音と共にきっちりと執事のお仕着せを身につけたジョシュアが入ってきた。
ジョシュアは寝台の脇にあるテーブルに、カートに載せていたふたり分のカップを並べる。
「寝つきがよいように、カモミールティーをご用意しました」
「あ、待ってください。ジョシュアさんは座ってくださいますか? 私に淹れさせてください」
茶葉を適度に蒸らした丸みを帯びる陶器のポットからカップに注ごうとする彼を止める。
「いえ、しかし……」
「ジョシュアさん。私、帰国することにしましたの。明日、殿下にそのことを伝えようと思っています。だからこれが最後のお願いです。どうか聞き入れてもらえませんか」
ジョシュアはポットを手にしたまま、リンゼイをまじまじと見る。彼は口を開けかけるが思い直したのか、唇を結び、静かにポットをテーブルに置いた。
それで了解してくれたと受け取ったリンゼイは、そっと胸を撫で下ろす。
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