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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走
ジョシュアが手を離したポットを、彼が考え直さないうちにリンゼイは持つ。まだ彼は立ったままだったが、迷った末に座る決断をしたようだ。
椅子を引く素振りをするジョシュア。リンゼイは彼が腰を下ろす手前「あ……」と声を発する。するとジョシュアは座るのをやめた。
「そうでしたわ……。今朝お借りした本、眠る前に読もうと思っていたのに、あちらに置き忘れてました。少しお待ちください」
「でしたら私が」
リンゼイがカップに半分ほど紅茶を注いだポットを置き、続き間に行こうとすると、彼が先立って動いた。
「すみません」
そう言って彼の背中を見送り、完全に姿が見えなくなると、リンゼイは隠し持っていたラベンダー色の小瓶を取り出す。刹那、迷いが生じる。
だが次の瞬間には、意を決したように小瓶の蓋を外し、ジョシュアのカップにそれを注いでいた。
(もう私にはこれしかないの……)
ジョシュアと想いを通わせる望みを絶たれた今、もうひとつの願いを叶えることしかリンゼイの頭になかった。
ジョシュアの戻る気配に小瓶をサイドテーブルの引き出しに素早く隠し、残りのお茶を注ぎ終え、何事もなかったかのようにリンゼイは椅子に腰掛けた。
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