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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走
「ありがとうございます。ジョシュアさんもお座りになってください」
緊張し、固い表情のリンゼイの顔を、オレンジ色のオイルランプの火がゆらゆらと揺らす。
ジョシュアは持ってきた本を、先ほどリンゼイが小瓶を隠したサイドテーブルの上に置くと、僅かに頭を下げて椅子に椅子に座る。
「……てっきりリンゼイ様はルビーの小説を読まれているものかと思っておりました」
暫し無言の空気が流れたあと、ジョシュアがサイドテーブル上にある本に眼を向けて切り出す。そこには冒険譚の本が置かれてあるからだ。
「いえ、それはもう読んでしまいましたの」
「そうでしたか。いかがでしたか」
「はい……。あの……お茶、召し上がってください」
なかなかカップに手をつけようとしないジョシュアに、リンゼイは不安げな面持ちで勧める。かく言うリンゼイも喉がカラカラだった。
姉によると、媚薬の効果は即効性で。呑めばたちまち身体が熱を帯び、女が欲しくて堪らなくなるそうだ。あれをジョシュアが口にすればもう、リンゼイの退路は断たれる。
ジョシュアの心が手に入れられる僅かな望みも、完全に消え失せるだろう。強引な手を使い、騙し討ちをしたリンゼイの顔を見たくないくらい嫌われるかもしれない。いや、そうに決まっている。
だがそれも覚悟の上──否、覚悟とは少し違う。何年も彼だけを想ってきたリンゼイの純真な恋心が打ち砕かれ、溢れんばかりの想いが防波堤を失い、激流の如く流れ出て自失してしまっていたのだ。
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