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王女様の不埒な暴走
第4章 執事の噂と王女様の暴走




 ジョシュアが一口飲むのを見て、リンゼイは安堵の吐息を漏らす。そして自分も緊張で渇ききった喉を潤そうと、二口、三口と紅茶を流し込んだ。


「ルビーの新作はお気に召しましたか」


 まだ媚薬の効果は現れていないようで、ジョシュアは話の続きを悠然と訊く。


「はい、あの……とても素晴らしかったです」


 気が気でないリンゼイは、気の利いた感想を言えない。緊張を和らげようと、さらにカップに口をつけ、飲み干してからコクリと喉を鳴らす。


「えっと……ルビーの小説はどれも素晴らしいんですが、新作はこれまでで一番胸が躍りました」


 昨夜見た光景を思い出したくなくて没頭していたせいもあるが、たった一日で読み切ったのは新作が初めてだ。それだけ物語に引き込む力があったのだ。


「ルビーの本を読んでいると、まるで自分もその世界に行った気がしてきます。主人公と同じように悲しんだり、苦しんだり。でも最後はすごく幸せな気持ちになって。ああ、私も頑張ろうって思えてくるんです。……って、私はもうダメですけど」


「え?」


「でもジョシュアさんは頑張ってください。望みを捨てないでください」


「それはどういう……?」


 言いかけたジョシュアは不意に眼を眇め、頭をぐらりと揺らし、片手を額に当てた。






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