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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり




「……ゼイ、リンゼイってば」


「ふぇ……?」


「“ふぇ”じゃないわよ。さっきから呼んでるのに」


「ご、ごめんなさい、お姉さま。なんでしたでしょうか?」


 イレーネはリンゼイの4歳年上の姉姫だ。カンターヌいちの美姫と謳われるだけあり、ウェーブがかかった栗色の髪は長く腰まであり、長い睫毛も同じ栗色で、大きな瞳は紫かかったアメシスト色。形のいい鼻の下にはふっくらとした艶やかな唇。


 上品な顔立ちで、どこか色香も漂わせ、リンゼイの姉でありながら憧れの人だ。


 そのイレーネは化粧を施していないのに濃い赤色をした唇を尖らせ、リンゼイをねめつけている。とはいっても本気で怒っている雰囲気ではなく、拗ねているようにも見える。


「私との大事な大事なお茶の時間より、このところのリンゼイは他に心を奪われているようね」


「そんなことは……」


 リンゼイは咄嗟に否定してみせる。なぜ否定してしまったのかはリンゼイ自身にもわからないが、なぜかそうしなきゃいけない気がして。


「ふぅん? 私にはなーんでもわかっちゃうんですからね」


「ですからお姉さま。私はなにも」


「ズバリ……恋、してるわね?」


 人に指差す行為はマナーに反するのにも拘らず、イレーネは小気味よく突きつけてきた。





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