この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり
「……ゼイ、リンゼイってば」
「ふぇ……?」
「“ふぇ”じゃないわよ。さっきから呼んでるのに」
「ご、ごめんなさい、お姉さま。なんでしたでしょうか?」
イレーネはリンゼイの4歳年上の姉姫だ。カンターヌいちの美姫と謳われるだけあり、ウェーブがかかった栗色の髪は長く腰まであり、長い睫毛も同じ栗色で、大きな瞳は紫かかったアメシスト色。形のいい鼻の下にはふっくらとした艶やかな唇。
上品な顔立ちで、どこか色香も漂わせ、リンゼイの姉でありながら憧れの人だ。
そのイレーネは化粧を施していないのに濃い赤色をした唇を尖らせ、リンゼイをねめつけている。とはいっても本気で怒っている雰囲気ではなく、拗ねているようにも見える。
「私との大事な大事なお茶の時間より、このところのリンゼイは他に心を奪われているようね」
「そんなことは……」
リンゼイは咄嗟に否定してみせる。なぜ否定してしまったのかはリンゼイ自身にもわからないが、なぜかそうしなきゃいけない気がして。
「ふぅん? 私にはなーんでもわかっちゃうんですからね」
「ですからお姉さま。私はなにも」
「ズバリ……恋、してるわね?」
人に指差す行為はマナーに反するのにも拘らず、イレーネは小気味よく突きつけてきた。
.