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王女様の不埒な暴走
第1章 物語のような恋の始まり



 “恋”──?


 姉から指摘され、リンゼイは瞳をまん丸くする。


 王城にある広い図書室には壁一面の本棚に多くの書物がひしめきあい、中でもリンゼイがお気に入りなのが王子様とお姫様の甘い恋物語だ。


 いつか自分にもあんな恋が訪れるのだろうか、と夢を抱いていた。だが現実にはスチュワートのような野蛮で意地悪な男の子がいるだけ。


 男女の仲に厳しいカンターヌでは社交界デビューを果たすまで、不用意に男性と接することも機会も与えられず、他にめぼしい男性といえば父と兄、それから使用人くらいだ。


 それにリンゼイは一国の王女だ。恋に憧れはしても、いずれ親の決めた相手と結婚することになるだろう、と物語のお姫様には自分はなれないのだと諦めていた。


 だが降って湧いたように──いや、降ったのはリンゼイだったのだが──とにかく自分にも夢にまで見たリンゼイだけの王子様と出逢ったのだろうか。


「ほら、心当たりあるんでしょ?」


 ジョシュアの微笑みを思い出し、呆けた顔をするリンゼイに姉はしたり顔で頷いた。









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