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王女様の不埒な暴走
第5章 暴走の果ての悲劇




「リンゼイ様はカンターヌの王女さまです」


「そうね」


 解りきったことを言われ、リンゼイは不可解な気持ちになる。


「カンターヌはここラインハルトとは違い、自由恋愛を良しとせず、貴族令嬢の方々は社交界へ出られるまで、お邸でご両親に大切に守られ育てられます。恋愛で結婚される方はごく稀だとか。そうですね?」


 その通りだ。リンゼイも社交界デビューをするまで、王城で様々な教育を受け、異性とはほとんど接してこなかった。その社交界で多くの異性と出逢い、その中から両親が娘に相応しい相手を結婚相手と決める。


 相応しい相手とは、人柄だけでなく家柄や自分の家に利がある相手だ。


 兄のように義姉を見初め、結婚まで至る例は、ライラの言った通り稀である。


「それは男性が女性に対し、処女性を強く求められているからだと聞きました」


「ええ……」


 万一結婚前に女が処女を失ったならば、その相手は責任を取って例外的に結婚せざるを得なくなる。それが一夜限りの過ちだったとしてもだ。


「でも私、ジョシュアさんに責任を取って欲しいなんて思ってないわ」


 本音を言えば、彼の妻になりたい。だが天地がひっくり返ろうとも、父母が執事である彼との結婚を認めてはくれない。だからそれはとうの昔に諦めていた。





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