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王女様の不埒な暴走
第6章 王太子の提案
「あはははは! もうダメだ……あはははは!」
張り詰めた空気に似つかわしくない──それこそ空気を震わせるほどの大きな声で、レオナルドが笑い出した。
「な……」
ジョシュアは言葉を失い、レオナルドが笑う様を呆然と眺める。
「お前が、王女に、襲われ……あはははは!」
なんということだろうか。怒りと悲しみに震えていたと思っていた彼は、笑いを堪えていただけだったのだ!
ようやく気付いたジョシュアは、怒れる立場でもないのに、つい叱責の声を飛ばす。
「レオナルド様! なにをお笑いですか!? 今どんな状況かわかっておられるのですか!?」
「悪い、悪い。だってお前……あの王女に縛られた挙句襲われるなんて……くくっ、あはははは!」
ついに彼は身を捩り、背凭れに伏せ、腹を抱えて笑い死ぬとばかりに笑い始めてしまった。
まったくこの方は……と、ジョシュアは怒りを通り越し、諦めに近い気持ちで深く嘆息する。
忘れていた。レオナルドという人物はどんな苦境に立たされても、その苦境さえも愉しむ才がある男だということを。
彼を見誤った自分を悔い、彼の笑いがおさまるのをじっと待つ羽目になった。
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