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王女様の不埒な暴走
第6章 王太子の提案
暫く立ち尽くしていたジョシュアだったが、一揖して踵を返す。
だが扉の取っ手に手をかける手前、振り返って長椅子に座るレオナルドを見遣った。
「……ひとつ、お伺いしたいことが」
「なんだ?」
「レオ様は複雑ではないのですか? その……リンゼイ様は……」
「“彼女”と似ているからか? だからどうした。似ているだけで彼女じゃない」
“彼女”とは、リンゼイと瓜二つのレオナルドの幼馴染の少女だ。リンゼイと年も同じで、妹のように可愛がっていた。けれど不幸にも少女は幼くして病に倒れ、この世を去った。
「それにもし、彼女とジョシュアが男女の関係になったとしても、俺は祝福していたぞ。なんて言ったって、ジョシュアは俺の兄のようなものだからな」
勿体ない言葉に胸が詰まる。不覚にも目頭が熱くなった。
「その兄を俺から奪うような真似をしたら、いくらジョシュアでも赦さんからな。よく肝に銘じておけ」
ジョシュアに決断させると言いつつ、最後に釘を刺すやり口に、ジョシュアも珍しく笑いを零す。ただその笑いは泣きたい気持ちを誤魔化すためだった。
ジョシュアは深く一礼し、今度こそレオナルドの部屋から去った。
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