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王女様の不埒な暴走
第6章 王太子の提案




 封筒にある宛名はレオナルドのものだ。そして書かれている字に見覚えがある。兄の字だ。


 裏返すと、封は切られているものの間違いなくカンターヌ王家の蜜蝋が押されている。


 しかし解せない。ジョシュアには見せられず、リンゼイには見せるということは、書かれている内容はレオナルドの話とは違うものということだろうか。


 それにしてもなぜこのタイミングで……と、いくつもの疑問は湧くが、集まる視線に手紙を読んだ方がいいだろうと封筒から手紙を取り出す。


 さほど長い文章でない文字を眼で追う。『内密にお願いしたいことがあります』と兄の字で書かれた出だし。レオナルドは大雑把に話していたが、兄の頼みはほぼその通りだった。


 しかも“ついでに”と言っていた内容は、兄ではなく姉の字だ。明らかに付け足された形跡がある。


 リンゼイは読み終えると手紙を膝の上に置き、掌に顔を埋める。


「すみません……」


 兄と姉がこんな頼みごとをしているなど露ほども知らなかったリンゼイは、居たたまれない気持ちになり、弱々しく謝る。


 妹想いの自慢の兄と姉。だが時としてあらぬ方向へ暴走し、自分もまた同じ血を引いてるのかと思うと、肩身の狭い気持ちになった。







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