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王女様の不埒な暴走
第8章 王女の持つ鍵と執事の手袋と刺繍の秘密
一般的に使用人の住まいは王城の地下にある。だがこのラインハルトの王城に仕える一部の使用人──家令を始めとする数人の使用人の部屋は、主の部屋に近い場所に設けられていた。これは不届きな輩が侵入した際、すぐ主の元へ向かえるようにという計らいかららしい。
ジョシュアの部屋もレオナルドの部屋にほど近い場所に据えられていた。
夜になり、行き交う使用人の数は昼間に比べ減るものの、見張りの衛兵や数名の侍女はまだ起きており、静かな城内を歩いている。
「リンゼイ様。私が合図したらあの角まで一気に走りますよ」
レオナルドからジョシュアの部屋を訪ねるように言われたことをライラに伝えると、彼女はなぜか悪い顔をしたあと「でしたら私にお任せを」と、頼っていいのか悪いのか悩むような態度を見せた。
しかもなぜかジョシュアには行くことを伝えないように言い出したのだ。
「これはある種、秘密の作戦です!」
ある種とは、どの種だろうかと疑問に思いつつ、ライラにはライラの考えがあるのだろうと、素直に従い──そして現在。
壁に張り付くように周りを見渡し「今です!」と駆ける彼女に付いていっているわけであるが。
これではリンゼイが不届き者になってしまった気分だ。
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